佐藤宏道 Hiromichi Sato/客員研究員
佐藤宏道(大阪大学 名誉教授)
2021年3月末まで大阪大学大学院医学系研究科教授。2021年4月より同名誉教授。専門は視覚系の神経科学。2016年4月から兵庫県芦屋市のシニアの人たちに呼びかけ「芦屋美術会」を主宰し、脳と美術について学ぶ活動をしている。
1980年に慶應義塾大学文学部心理学専攻卒業後、大阪大学大学院医学系研究科(神経生理学教室)で視覚中枢における神経伝達物質の役割に関する研究を始め、以後、金沢大学助手(医学部生理学教室)、大阪大学助手・講師(医学部神経生理学教室)、同教授(健康体育部・大学院医学系研究科)を経て、2021年に退職しました。
約40年の教育・研究生活は、人間、サル、ネコの視覚システムに焦点を当てていましたが、教育は脳科学の入門と中枢神経の構造と機能について大阪大学の学生ばかりでなく、高校生、小学生を対象にした授業も行い、研究は動物の大脳皮質視覚野ニューロンの受容野特性がどのように形成されているのかという問題を中心課題としました。すなわち脳が視野の情報をどのように処理しているかを動物実験により調べ、世界に報告してきました。
他に力を入れてきたのは一般の人に対する「脳と心と美術」に関する講演活動です。錯視や美術を取り上げて、脳の活動特性を解説しています。そこでは発達障害の人、心に辛さを抱えた人、筋ジストロフィ患者が制作した絵画・美術作品を紹介し、人が表現することの意味を問いかけます。また米国の人気画家アンドリュー・ワイエスには特別な関心があり、ワイエスや筋ジストロフィ患者の絵の色遣いの特徴を解析し、他の画家と比較する研究もしました。彼が制作を行った米国東海岸の2カ所(ペンシルヴァニア州チャッズフォード、メイン州クーシング)を訪れ、ワイエスがどこで誰をどのように描いたのかを確かめました。アメリカ合衆国の原点ともいわれる土地で素朴に生きた人たちをワイエスがどのような眼差しで見続けたかを辿っています。
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